テナガザル・さつきの実験 NO7 2002.01.20(Sun) (3歳1ヶ月齢:さつきの生年月日は1998年11月29日)

天気快晴で暖かく、来園者多数。午前9時20分〜10時30分。

<視線追従実験>
前回と同じ視線追従実験の項目をやろうとしたが、途中で中止した。
理由は、天気がよく早朝から来園者が多かったので、検査者が落ち着いて検査できず、さつきも集中できなかったため。
さつきは検査よりお客さんの子供達と遊ぶ方が面白く、レーズン入りカップよりもそばにいる子供達の方にすぐ注意が向いてしまった。それに食欲もあまりなくレーズンに興味を示さなかった。

9月以来前回まで計6回視線追従実験をやってきたが、いつもお客さんはいなかった。
今回初めてお客さんがそばに大勢来られた。お客さんのための動物園なので、そういう時は中止してもやむをえない。
この視線追従実験は、検査者と対象動物との微妙な間合いが必要で、お互いにかなりの集中力を必要とするため、周りがざわついている環境ではできない。

※参考までに、途中までの結果を示すと、以下の通り(○は成功、×は失敗を表す)。なお、これは正式なデータとはしない。
Aカップの近距離(対象から5cm)から指差す。
○、○、×、○、○、○、○、×。
Bカップの遠距離(対象から20cm)から指差す。
○、×、○、○、×、○、○、×。
次に、Cは省略して、
Dカップから顔を離して(対象から50cm離れて)見る。
○、○、×、○、×、×、○。ここで中止。というのは、さつきが検査に集中しないだけではなく、カップを取らずに板の上に飛び乗って抱きつきにきたため。

あとでビデオを見直してみると、間違った8回全て、この位置↓からカップを取った時だった。

逆光での実験.jpg (28426 バイト) 陰がじゃまをしている

右側から強い朝日がさしていて、検査者に木の枝の陰がちらちら映り、逆光ぎみで指示が見にくかったものと思われる。

さつきをかまっていると、少し離れたところに繋がれているニホンザルの江梨子が嫉妬の声を張りあげていた。さつきも江梨子もそばから離れようとすると、声を出して「行かないで」と訴える。

江梨子.jpg (28616 バイト) やきもちをやく江梨子

さつきと遊ぶ子供達を見ているのが楽しかった。こういう触れ合いはテナガザルにとってよい刺激になっていると思う。
この女の子は片方の手に食べ物を握りしめ、「どっちかな?」とさつきに問いかけている。

どっちかな.jpg (25159 バイト) どっちかな?

頭をなでて、肩をもみ、そのまま体を後ろに倒してお腹をさすると、さつきは気持ちよさそうにグルーミングされる。

肩もみ.jpg (30178 バイト) 肩をもんでやるとおとなしくなる

ペットボトルを持って蓋を開けさせている。さつきはうまくできるようになっていた。

キャップ開け.jpg (29010 バイト) キャップをねじってあける

楽しい動物園ですよ。みなさまも是非一度お越し下さい。
(午前10時〜午後5時、水曜日(祝日と重なる場合は翌日)・年末年始休館、入園料は大人210円・子ども100円)

<道具使用の実験>
遊びの延長として、道具使用の実験をやってみた。この検査も途中で集中をなくして何度も中断した。食欲がなかったのが一因かも。

@10cm手前にリンゴ片を置いて、引き寄せられるかを試した。
8回やって6回成功。なお( )内はどちらの手を使ったかを示す。
○(右手)、○(右)、○(右)、○(左)、○(左)、×(右)、○(左)、×(右)。
A20cm手前、10cm右の位置にリンゴ片を置いて、引き寄せられるかを試した。
8回やって、5回成功。
○(左手)、○(左)、○(左)、×(左)、○(左)、×(左)、×(右)、○(左)。
B20cm手前、10cm左の位置にリンゴ片を置いて、引き寄せられるかを試した。
8回やって7回失敗。
×(左手)、○(右)、×(左)、×(左)、×(左)、×(左)、×(左)、×(左)。
この課題は少し難しすぎたようだ。

最後に、さつきが子供達と遊んでいるどさくさまぎれに、以下の実験をしてみた。

<正答でないカップを指さしする実験>
さつきから向かって左側にレーズンを入れ、右側の空の方を指差す(5cm)実験。4回実施。
最初の3回は、指さしの指示に従って右側の空のカップを取った。4回目は左側を取った(3回の失敗で左側にレーズンがあるのを学習した可能性がある)。

<何の指示もせずカップを自由に取らせる実験>
何の指示もせず、二つのカップをただ差し出すだけ。8回実施。
○(右)、×(左を取って失敗)、○(左)、○(右)、×(右を取って失敗)、×(右を取って失敗)、×(左を取って失敗)、○(右)。

ランダムテスト.jpg (25082 バイト) 何の指示もなしにカップを取らせる

見事に正解と失敗が半々になった。何も指示しなければ、正答の確率は0.5であるということが分かった。
これで、さつきがレーズンの臭いに反応していないということは分かったが、このような実験は信頼関係を損なう(さつきにとって学習課題としての意味がない)ので気が進まない。今回限りとする。
ということで、視線追従実験はこれでひとまず終了。

テナガザル・さつきの実験 NO8 2002.02.02(Sat) (3歳2ヶ月齢:さつきの生年月日は1998年11月29日)

天気曇り、肌寒い。来園者はすくない。午後3時50分〜4時50分。

<道具使用>
10cm手前にリンゴ片を置く試行は前回もできていたので省略して、20cm手前、10cm右の位置にリンゴ片を置いて試してみた。
@20cm手前、10cm右の位置にリンゴ片を置いて、引き寄せられるかを試した。なお( )内はどちらの手を使ったかを示す。
8回やって、見事に全部失敗。
×(右手)、×(右)、×(右)、×(右)、×(右)、×(右)、×(右)、×(右)。
それで、一段階易しい課題に戻って、
A10cm手前にリンゴ片を置いて、引き寄せられるかを試した。
6回やって4回成功。
○(左手)、○(右)、○(左)、○(左)、×(左)、×(右)。
6回目にさつきが道具を投げ捨てた時、道具が壊れてしまったので、やむなく中止。

やはり、いきなり高い課題を試すのはダメで、易しい課題から少しずつ段階を追って課題を設定することが大切だった。そんなことは分かっていたはずだったのに、検査者がおバカだった。単に道具を引き寄せることはできても、道具をリンゴ片のところに動かしてから引き寄せる課題は3歳のテナガにとってはかなり難しい課題だと思われる。
「物を他の物に定位するという行動は出現しにくい。物を他者に定位するほうが、物を物に定位するより生起しやすい。これは、ヒト、大型類人猿でもいえることでしょう。」(滋賀県立大・竹下秀子さんからの私信)

<指さしによる指示>
さつきの遊び場のこちら側に指示する人、あちら側にリンゴ片を持つ人を配置する。指示する人の指さしを理解してその方向を振り向くかどうかを試した。

指さしで指示.jpg (21743 バイト) 指差しで向こうの人を示す

振り向く.jpg (21494 バイト) 次の瞬間、振り向く

4回やって3回は、明らかに指さしの結果、振り向いてリンゴ片を持つ人に気づき、そちらに行ってリンゴ片を入手した。あとの1回は、指さしで振り向いたのか偶然なのか分からなかった。
この実験はあまり回数をこなすと、反対側にリンゴ片を持つ人がいることを学習して、指さししなくてもそちらに注意が向くので、もう少し実験に工夫が必要だろう。

<レーズン入りペットボトルの実験>
前回、人が支持するレーズン入りペットボトルの蓋をあけることは出来るようになったが、逆さにして中のレーズンを落として取り出すことは出来なかった。8回実施。

1回目:人が支持するペットボトルを提示すると、蓋を左手ねじってあけた。その後、偶然逆さまにしてレーズンが下に落ちたので取って食べた。
2回目:レーズン入りペットボトルを提示して、取らせた。その後4分20秒間、試行錯誤した(これだけ集中して長時間試行錯誤したのは初めてのこと。これまではすぐポイと捨ててしまっていた。)が蓋あけが出来ず。それで、人がボトルを持って支えてやる(↓の写真)と、すぐに左手でねじってあけた。そして自分で逆さにしてレーズンを落として拾って食べた。
3回目〜8回目:全て自力で蓋を(全て左手でまわして)取って、ボトルを逆さにしてレーズンを落とし、拾って食べた。

ボトルを支えてあけさせる.jpg (23202 バイト) 2回目の途中、ボトルを持ってやって援助する

ボトルを逆さまにする.jpg (12508 バイト) 8回目、こうやって逆さにして取り出した

この課題は12月8日(さつきの実験 No4)から始めた。この技術を獲得するまでの学習過程をまとめてみると、
1.人が支持して固定したペットボトルの蓋を開ける訓練をさせる。
2.(人の援助なしに)レーズン入りボトルを渡し、何回かの試行錯誤を経験させる。その際に適当なタイミングで援助(人がペットボトルを支持してやって蓋をあけさせる)をする。
3.蓋をあけた後、偶然ボトルが逆さまになった時、レーズンが落ちるのを体験させる。
4.自力で全ての過程をやりきることが出来る。

この過程はそのまま学校教育での学習過程に適用できるだろう。
つまり教師というのは、「適切な援助を、適切な時を見計らってする」ことが仕事だということ。学習者の意欲を引き出しながら、「適切な」援助を「適切な」時にすることはなかなか難しい。それが出来るのがプロということなのでしょうが。この実験でそんなことをさつきに教えてもらった。

ともかく、さくらもさつきも3歳頃に、レーズン入りペットボトルの蓋をあけてレーズンを取り出す技術を身につけたということになる。

テナガザル・さつきの実験 NO9 2002.03.02(Sat) (3歳3ヶ月齢:さつきの生年月日は1998年11月29日)

天気曇り、北風が吹いて肌寒い。来園者はすくない。午後3時40分〜4時30分。

<道具使用>
@10cm手前にリンゴ片を置いて、引き寄せられるかを試した。
ビデオを見直したら、録画できていなかった。まあ、たまにはこういうこともある。
8回試行した。記憶では、ほぼできた。たぶん1〜2回失敗したが、それは道具がリンゴ片の上を通り過ぎたため。
A20cm手前、10cm右の位置にリンゴ片を置いて、引き寄せられるかを試したが、右手を使うため、うまくリンゴ片に道具が当たらないので、この試行は3回やってやめる。
それで、次に、
B20cm手前、10cm左の位置にリンゴ片を置いて試してみた。
13回やって、8回成功。全て右手を使用した。
×、○、×、○、×、○、○、○、×、○、○、×、○。
たまたま右手を使ったので、左よりのリンゴ片が取れたが、リンゴ片の位置に応じて使う手を変えたり、手を操作するということはできない。

道具.jpg (32342 バイト) Bの実験で、失敗。もう少しのところでリンゴ片に届かない。

<いろいろなオモチャ>
いろいろなオモチャやものを置いておいて、さつきがどういう行動をするか、反応を見る。
さくらの検査で使ったオモチャやものをいっぱい置いてみて、様子を見た。30分間。

いろいろなもの.jpg (25158 バイト) このようにいろいろ置いてみた。

鏡.jpg (21507 バイト) 鏡をのぞき込む。

なお、この検査は、さつきの姉・さくら(2歳9ヶ月齢の時)でも実施している(シロテテナガザル・さくらの発達検査 No12 参照)。
その結果と比較してみると、

さつき(3歳3ヶ月齢):
「全部で28のものとかかわった。そのうち、3回以上さわったものは、モンチッチのぬいぐるみ(17回)、バネのようなおもちゃ(15回)、プラスチック製の小さなオレンジ色のボール(9回)、マラカス(7回)、プラスチック製のバナナの小さな模型(7回)、片手鍋(5回)、プラスチック製の黄色いトウモロコシの小さな模型(5回)ゴリラの小さなぬいぐるみ(5回)、鏡(4回)、小さな鐘(3回)、ピンク色のボール(3回)、電話機のおもちゃ(3回)、青色の入れ子カップ(3回)、黄色の入れ子カップ(3回)。」

さくら(2歳9ヶ月齢):
「全部で40のものとかかわった。そのうち、3回以上さわったものは、モンチッチのぬいぐるみ(10回)、バネのようなおもちゃ(8回)、鏡(8回)、オートバイのおもちゃ(5回)、タオル(4回)、スポンジの黄色いボール(3回)、赤い積み木(3回)。」

両者に共通しているのは、
@モンチッチのぬいぐるみバネのようなおもちゃに特に興味を示した。
A30分間、あきることなく様々なものに関わった(ものに対する好奇心はとぎれない)。
B関わった内容は、さわってみる、右手と左手での頻繁な持ちかえ(両手でもてあそぶ)、口に入れくわえてみる、投げるなど。
C二つ以上のものを同時に持って操作するということは一回もなかった(*1)これは、テナガにおける、ものとものとを関係づける操作性の弱さを示すものだろう。いつも一つのものと関わり、それを手放してから次のものにさわった。
今まで観察してきた中で、両手に同時に物を持つということはまれであった(ないわけではないが)。食べ物の場合でも、1つあれば満足し、1つ持ちながらもう1つの物に手を伸ばすということはなかった。

(*1)これは間違いだった。さつきはたしかにそうだったが、さくらの発達検査・No12のビデオを見直してみると、さくらが二つのものを同時に手に持ったことが3回あった。その場面の写真。↓

sakura両手で持つ.jpg (34200 バイト) さくらの検査・No12での場面。右手に青いボール、左手にバネを持つ。

さつきの場合、どちらの手を先に出して触ったかを集計してみると、右手86回、左手41回、両手同時3回だった(*2)。右手使用がダブルスコアで多いが、これが右利きの証拠と言えるのかどうか?

(*2)さくらのビデオを見直して、どちらの手を先に出して触ったかを集計してみると、右手34回、左手51回、両手同時3回だった。さくらは左利き?

さらに、両手同時にあるものをつかんだことが、さつきもさくらも3回あったが、そのつかんだものは、さつきは3回とも、さくらは2回(1回はオートバイのおもちゃ)、モンチッチのぬいぐるみだった。テナガの子どもは、モンチッチのぬいぐるみに対しては、他のおもちゃとは違った認識をもっているのではないだろうか(つまり、モンチッチを大事に扱わなければならない対象物=同類の赤ん坊として考えている)?

モンチッチ.jpg (21029 バイト) モンチッチを抱く。

バネ2.jpg (21737 バイト) バネにこわごわ触る。

モンチッチのぬいぐるみに対する関わり方は他のものとは違った。抱いたり頻繁に持ち替えたりした。
また、バネのおもちゃに対しては、触るとバネが特殊な動きをするので怖かったのか、へっぴり腰で遠くから触ってみるだけだった。しかし、怖いけれども触ってみたいという好奇心は旺盛だったのか、何回も触っていた。

ホームページTOPへ

inserted by FC2 system