さつきの実験No14 2002年5月15日(水) (3歳5ヶ月齢、さつきの生年月日は1998年11月29日)

動物園の休園日(水曜日)なら、落ち着いて検査ができるのではないかと考え、午後3:00から開始、4:30まで実施した。
あいにくの小雨模様。滋賀県立大の院生・井本将志さんが手伝ってくれた(下の日時・日付のある写真は彼の撮影したものです)。
さつきは予想以上に検査に集中してくれた。

<カップを左右入れ替えてから取らせる実験>
液晶の実験に入る前に、カップを使った実験を予備的にやってみた。
さつきの目の前で、二つのカップうちの一つにレーズンを隠してから、カップの左右を入れ替える。そして、カップを取らせる。
これは7回やって6回成功。結果は、○、○、○、○、○、×、○。
追視ができる。

<液晶モニターを見るか?>
まず、NHK教育テレビの番組「おかあさんといっしょ」を録画したものを液晶画面で見せた。

 画面に注目した

さつきはかなり画面に注目してくれた。
さらに、さつきがおもちゃと遊んでいるビデオ画面も見せた。
これにも注目して見てくれたので、次の実験に入った。

<レーズンをカップに隠すのを液晶モニターで見せたあと、実際に正しいカップを取るか?>
まず、二つのカップのうちの一つにレーズンを隠す場面を、液晶モニターで見せる。
その場面は、後ろのドアの向こう側で撮影している。

 カップに隠すところを液晶で見せる

 その画面

レーズンを片方のカップに隠す画面をさつきが見たのを確認してから、ドアの向こうから実物が現れる。

 ドアの後ろから実物が現れる

正しいカップ(レーズン入りの)を選択できるかどうか?
8回やって5回成功。結果は、○、×、○、×、○、○、○、×。
この実験は、今回初めて試行にこぎつけることができた。
やはり、画面に集中できる落ち着いた環境が大切だということだろう。
小雨が降るという、しっとりとした雰囲気も良かったのかも。

<道具使用実験その1>
これは前回にやった実験。リンゴ片の置いてある方の道具を引っ張るか?写真は、No13を参照されたい。
8回やって、7回成功。結果は、×、○、○、○、○、○、○、○。

<道具使用実験その2>
これも前回やった実験。片側に穴が開いている装置での実験。
8回やって8回とも成功。その場面↓。

 8回とも、穴のあいてない方の道具を選択した

<バナナとひもの実験>
ひもで縛ってあるバナナを引き寄せられるか?
これは、4回やって3回成功。
○、×、○、○。その場面↓。

 バナナが結んである方のひもを取ってバナナを入手した

さつきの実験No15 2002年5月22日(水) (3歳5ヶ月齢、さつきの生年月日は1998年11月29日)

この日も動物園の休園日。曇り空だったが、前週よりは天気が良く、さつきは少し落ち着きがなかった。
pm3:30〜4:30まで。

<レーズンをカップに隠すのを目の前で見せたあと、正しいカップを取るか?>

 正解のカップを取る

8回やって、6回正答。
×、○、○、○、○、×、○、○。

<レーズンをカップに隠すのを液晶モニターで見せたあと、実際に正しいカップを取るか?>

先週の実験(5月15日)よりも落ち着きがなかった。後ろのドアに人がいるのが分かっているので、頻繁ににそちらに行きドアを開けようとする。液晶の モニターになかなか注目しない。

 画像を見せる

画面の前にじっとしてないで、あちこち動き回るさつきを相手に10分ほど悪戦苦闘したが、やっと少し見たので、検査を開始する。
1回目、×。これは分かってなかった。
2回目、3回目も、どさくさまぎれにやったという感じ。でも、なぜか○。
液晶画面に近づいては、時々私の頭の上に乗っかってきて髪の毛を引っ張ったりするので、”こらっ”ときつく叱ると、それからおとなしくなって、画面 の前から離れず、集中するようになった。4回目からは、前回と同じように検査に集中してくれた。

 実物が出てくる

”画面を見たらレーズンをもらえる”という検査の手順が理解できたからではないかと考えられた。
結局、8回やって6回正答。
×、○、○、○、○、×、○、○。

<道具使用実験その1>
リンゴ片の置いてある方の道具を引っ張るか?

 正解

8回やって、8回とも正答。
ここ3回の検査結果を総合すると、22/24×100=91.7%の正答率。
二項検定では、Prob(x>=22| p= 0.5, N=24) <= 1.79e-05
http://www.graphpad.com/quickcalcs/binomial1.cfm を参照した。)
この課題は、しっかり理解できているといっていいだろう。

<道具使用実験その2>
片側に穴が開いている装置での実験。
この場合は左右両方に、リンゴ片がセットされている。穴があいてない方の道具を引っ張れば入手できて、正答。
8回やって6回正答。○、○、×、○、○、○、×、○。
その場面↓。

 正解

この実験についての3回の結果は、20/24×100=83.3%の正答率。
Prob(x>=20| p= 0.5, N=24) <= 0.000772
これも、できると言っていいだろう。

<バナナとひもの実験>
ひもで縛ってあるバナナを引き寄せられるか?
これは、4回やって2回成功。その場面↓。

 バナナを結んでない方の紐を引っ張って失敗

×、○、○、×。正答率50%
これでは、紐とバナナの関係を理解しているとは言えない。
面白いのは、全てさつきから見て右側の紐を引っ張ったということ。
(なお、全ての実験は、トータルすれば左右同数になるようにコントロールされている。)
これまでの実験でも見られたことだが、どちらかわからないときには、無意識に右側を引っ張る(取る)という習性があるようだ。

さつきの実験No16 2002年5月29日(水) (3歳6ヶ月齢、さつきの生年月日は1998年11月29日)

今回も動物園の休園日。晴れ時々くもり。今回は夕方に時間がとれなかったので、正午過ぎのpm12:30〜13:30まで実施。

<レーズンをカップに隠すのを目の前で見せたあと、正しいカップを取るか?>
これは8回やって6回成功。
結果は、○、×、○、○、○、×、○、○。
この結果を見るとまあまあのように見えるが、しかし、明らかに集中力が欠けていた(カップへの注視がすぐにとぎれた)。
あまり食欲もなかったみたい。いつもならすぐ検査にのってくる(レーズンをもらいに来る)のに、なかなか来ない。
失敗した時というのは、しっかりカップを見ていなかった時だった。こういうことは、何回も検査をやっているとよく分かるようになった。

<レーズンをカップに隠すのを液晶モニターで見せたあと、実際に正しいカップを取るか?>
今日は落ち着きがなかった。後ろのドアの向こうに人がいるのを分かっているので、頻繁ににそちらに行きドアを開けようとする。液晶モニターにはな かなか注目しない。
前回(5/22)はそれでも、3回目からは落ち着いて反応してくれたが、今回は全くダメ。
画面を見ていないのは確実だったが、動機付けのため6回やってみた。しかし、全てさつきから見て右側のカップを取った(またしても!)。
全6回中3回は正解したことになるが、しかし、要するにこれは理解できていなかったということ。

 ドアの向こうが気になる

今回は、うまく画面に注目してくれなかった。しかし、この失敗で、さつきは、カップを取る時に中のレーズンの匂いなどを手がかりにしているので はない、ということはハッキリした。これで、これまでの実験での正答に確信が持てた。

そこで問題は、前の2回はできたのに、何故今回はできなかったのかということになる。
これまで、お客さんがいる時には集中力が欠けると思われたが、今回も休園日でお客はいない。
そうすると、他の可能性としては、以下のようなことが原因として考えられる。
@時間帯によって、この課題に対する集中力が違う(正午過ぎには低下する?)。
A天候(今回は晴れ。晴れだと液晶画面が相対的に暗く見えにくいということがあるかも)によって、違う。
B検査者の側に問題がある(例えば、体調が悪いとか、心理的な悩みを持っていて検査に集中できないなど)。
Cたまたまである。

野生のテナガの場合、早朝や夕方(pm3:00以後)にはあまり動かない。
また、天気が良くなくて、曇りや雨の時にもあまり動き回らない。
そういう時間帯では、落ち着いて物事に対処できるのかもしれない。
さつきは、毎日昼間は野外の園庭で生活している。これ(天気や時間帯で反応に違いがあるか?)は、今後、検討してみる余地のある課題ではある。

なお、このように野外で直接実験動物と接しながらやる検査では、出来る出来ないは、ヒト(検査者)との関係がうまくとれるかどうかということと深く関 連しているだろう。ということは、この問題は、どういう環境でテナガはヒトとの関係がうまくとれるのだろうか?という問題でもある。

<道具使用実験その3>
前回までで、片方穴あき課題はできることが分かったので、今回は両方穴あきで、食べ物の一方は穴の手前、もう一方は穴の向こう側という課題をやろうとした。4回目までは順調に正解した↓が、5回目に失敗(穴の向こう側のバナナを引っ張った)した時、バナナ片が道具にくっついて穴に落ちず、手前まで引っぱられて入手できてしまったため、この実験はそれ以後中止した。リンゴを切るのが惜しくてバナナを薄く切って使用したのが失敗の原因。
ただ、5回中4回正解した、ということは言える。しかし、これは単に、近くにバナナ片のある方を引っ張っただけなのかもしれない。

 穴の手前に置いてある方を引っ張る

<バナナとひもの実験>
ひもで縛ってあるバナナを引き寄せられるか?
これは、4回やって2回成功した(×、×、○、○)が、初めの2回の失敗で取り方を学習したのが観察された。
初めの2回は、バナナを結んでない方のひもを取ったが、その試行直後に実験セット(ひもとバナナの乗っているベニア板)をひき、もう一方側のひもは引っ張れないようにした。それで、最初の2回はバナナを入手できなかった。
そこで、さつきは、ひもをちょっとだけ引っ張ってみてバナナがついてこないのが分かるとすぐに引っ張るのを止め、反対側のひもを引っ張った。そして、見事バナナを入手した(3,4回目とも)。
その3回目の場面↓。

 右側を引っ張ろうとして思いとどまり、

 左側を引っ張りバナナを入手した。

試しに少し引っ張ってみて様子を見て、ダメなら反対側を引っ張るというやり方は自ら発見したが、ひもとバナナの関係は理解できていなかったということになる。
なお、この、「こっちではないあっち」という行動ができる力は、ヒトでは一歳半で生じると言われている。

さつきの実験No17 2002年6月12日(水) (3歳6ヶ月齢、さつきの生年月日は1998年11月29日)

動物園の休園日。晴れ時々くもり。夕方のpm16:00〜17:00まで実施。
今日は晴れの天気だったが、落ち着いていた(実験は日陰でやった)。
ということで、実験がうまくいくかどうかは天気とは関係ないということが分かった。

<レーズンをカップに隠すのを目の前で見せたあと、正しいカップを取るか?>
これは8回やって7回成功。○、○、○、○、○、○、○、×。
ほぼ完璧。

ここ3回の試行の正答率は、19/24×100=79%
二項検定では、
Prob(x>=19| p= 0.5, N=24) <= 0.00331

<レーズンをカップに隠すのを液晶モニターで見せたあと、実際に正しいカップを取るか?>
前回は落ち着きがなく、ドアが気になって画面に集中しなかったので、装置を変えてみた。
段ボールで大きなついたてを作り、その後ろで撮影した画面を、ついたての前で見せた。

 このように段ボールの後ろに隠れて撮影する

 画面を見たのを確認してから合図を送り、実物を提示する

 レーズン入りカップを取った

8回中6回成功。結果は、○、○、×、○、○、×、○、○。

これまでの24回の試行(前回の画面を見なかった試行は除く)での正答率は、17/24×100=70.8%。
これを二項検定でみると、以下のようになる。
Prob(x>=17| p= 0.5, N=24) <= 0.032

<バナナとひもの実験>
ひもで縛ってあるバナナを引き寄せられるか?
これは、4回やって2回成功した(×、○、○、×)が、正答率50%では、この課題は理解していないと考えられる。
また、例によって(わけがわかってない時の)、全て右側のひもを引っ張った。

さつきの実験No18 2002年6月19日(水) (3歳6ヶ月齢、さつきの生年月日は1998年11月29日)

動物園の休園日。快晴。夕方のpm16:00〜17:00まで実施。
成和中学の2年生17名が職場体験学習に訪れていた。彼らが16:00に帰るのを待って、検査を開始。
今日は落ち着いていたが、少し集中力に欠けていた。

<指さししたレーズン入りカップを取るか?>
これは8回やって6回成功。○、×、○、○、○、×、○、○。

<指さし場面を液晶モニターで見せたあと、指示したカップを取るか?>
これは8回やって5回成功。○、○、×、○、○、×、○、×。

1回目に右手で右側のカップを、5回目に右手で左側のカップを取ったが、外は全て左手で左側のカップを取った。
5回目を除いて、他の場合は全て手が先に出た方側のカップを取ったことになる。
中学生の体験学習で多くの生徒が来園していて、動物の世話や掃除をしていた。午後4時にはみんな帰ったが、検査をするには少し落ち着かない雰 囲気だったかもしれない。
さつきは画面を見たが、同時に他のものにも注意が向いていたようだ。
しかし、しっかり見た場合(5回目の試行)には、間違わなかった(右手で、反対側の左側のカップを取った。こういう場合は確実に理解していることを 示す)。

<バナナとひもの実験>
ひもで縛ってあるバナナを引き寄せられるか?
これは、4回やって2回成功した(×、○、○、×)。
さつきは全て右側の紐を引っ張った。
1回目の試行(右側のバナナを結んでない方の紐を引いた)では、左側の結んである方の紐も見たが、それでも右側を引っ張った。
紐とバナナの、結び・結ばれないの関係が理解できないようだ。

<大きいバナナと小さいバナナ>
大きいバナナを左側、小さいバナナを右側に(さつきから見て)提示し、その取り方を観察した。
手がかりがないと右側を取る習性があるのでわざと小さいのを右側に提示した。
大きい方を取る意思があれば、右側に偏ることはないはずである。

 大きい方を取らない

その結果:
さつきは7回の試行で、全て右側の小さい方のバナナを取った。
そのうち6回は右手で取ったが、1回だけ(5回目の試行)左手で右側の小バナナを取った。

7回中5回は見比べは見られなかったが、2回は左右見比べてから取った。しかし、取ったのはいずれも小さい方である。
それに、一つ取った後もう一つにも関心を示して欲しがることもなかった。これはどういうことなのか?

さつきは習性に従って右側に手を伸ばしたように見受けられた。つまり、大小は分かっていないようだ。バナナがあれば何も考えずにそれに手を伸ばし、一つ入手できればそれで満足するようである。
ヒトであれば2歳頃になると見比べて大きい方を取るし、もう一つにも関心を示して欲しそうにするところであるが、さつきは欲がない。
さつきはまだそこまで発達していないということだろうが、ヒトに一番近いチンパンジーならどうするのだろうか?
*霊長研のアユム君の記録(2歳の時)によると、彼は多い数の方を選ぶことができるという。

<ニホンザルのあやちゃん>
ニホンザルの赤ちゃん(野生)が動物園に持ち込まれていた。生後2週間くらい。
女の子。おかあさんはどうなったのかわからない。あやちゃんと名付けられた。
目の前で手を動かすと、左・右、上・下とも180度の追視ができた。

 美人のあやちゃん

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