テナガザル・さつきの実験 NO1 2001.09.01(Sat) (2歳9ヶ月齢)

以前にやった、さくらの発達検査は、3歳までしかできなかった。
妹のさつきがそろそろ3歳になるので、福知山動物園に様子を見に行ったところ、これからもしばらくは園にいるということだったので、検査を再開することにした。
さつきの体つきはずいぶん大きくなっていた(1998年11月29日生れの2歳9ヶ月齢)。

さつきの顔.jpg (27079 バイト) さつきの顔

あまり大きくなると、人との接触に問題が出るのでは、と心配したが、それは杞憂だった。
福知山動物園では、さつきが昼間、中庭に放し飼い(ロープで繋がれて)にされている間、園長さんをはじめ、飼育係の方がいつも側にいて、その行動をフォローしている。

さつきは毎日子供連れのお客さんと接触している。
これほど多くの人と接触したテナガザルは他にはいないかもしれない。毎日大勢の人間を観察した結果、彼女は人をよく理解するようになった。
お客さんは決してさつきをいじめたりはしない。抱いたり、頭やお腹をさすったりしてかわいがってくれることを知っている。だから、人を信頼しているので、噛みついたりすることはない。安心して、甘えている。

甘えるさつき.jpg (29137 バイト) 甘えるさつき

今回はテーマを絞ってやることとした。
「心の進化」(松沢哲郎・長谷川寿一編、岩波書店)に、板倉昭二氏の”他者の心を理解する”という論文が載っている(p51〜57)。
ここに、視線理解についての実験が詳しく説明してあったので、これをやってみることにした。

二つのカップを用意して、その一方にレーズンを入れて伏せ、それを目の前において、検査者が@カップをトントンたたく、Aカップを指さしする、という二つの刺激を与えた場合に、そのカップ(レーズンが入っている)を取るかどうか、という実験。

カップを指さし2.jpg (26623 バイト) カップを指さしして反応を見る

@カップを検査者がトントンたたいた場合。
計14回行ったが、4回目に一度失敗した以外、すべて成功。

Aカップを指さし(対象から5cm)した場合。
最初の10回のテストでは、最初から×、○、×、×、×、○、○、○、×、×の順で思わしくなかったが、その後の5回は連続して成功。
これは、指さしの意味を学習したことを示している。

ただし、これはアカゲザルもできるというのだから、テナガザルができても、ちっとも不思議ではない。
それで、次回はB検査者が正しい対象物に顔を近づけて見た(距離15cm)場合にどうか、という課題に挑戦してみる予定。

それから、この実験をやっている途中で、3度ほど、カップを検査者に手渡そうという意図を感じさせるような操作があった。
検査者の差し出した手の方に、カップをポイと軽く投げる操作が見られた(これは、さくらでは観察できなかったこと)。

カップを渡す1.jpg (23971 バイト) ちょうだいと手を差し出すと、

 カップを渡す2.jpg (21710 バイト) 手の方にポイと軽く投げた。

また、片手なべを自分で頭にかぶせ、鉄棒にぶら下がった。

ナベかぶり.jpg (19563 バイト) なべかぶり遊び?

こんな遊びもできるんですね。

テナガザル・さつきの実験 NO2 2001.10.07(Sun) (2歳10ヶ月齢)

福知山動物園には、お客のいない時間帯ということで、8:45a.m.におじゃました。いい天気だった。
検査時間は約1時間。これくらいの時間が、さつきが集中して課題に取り組める限界のようだ。
今日の課題は、前回の続きで、視線理解の実験と、道具使用の実験。

@カップを指さし(対象から5cm)した場合(前回の写真を参照されたい)
これは前回学習した課題だが、それを記憶しているかどうかを見た。
結果は、5回試みて、5回とも成功。
カップを取った後、レーズンを地面に落として見失ったことが一度あったが、その場所を指さしで教えたら、すぐに見つけて取り上げた。
さつきは指さしの意味をよく理解している。

地面のレーズン指さし.jpg (38542 バイト) 地面に落ちたレーズンを指さしで教える。

A顔を近づけて(約15cm)見る
二つのカップを用意して、その一方にレーズンを入れて伏せ、それを目の前において、検査者が顔を15cmの距離まで近づけてレーズン入りのカップを見ると、そのカップを取るかどうか。

顔を近づける.jpg (34931 バイト) このようにレーズン入りのカップに顔を近づけて見る。

10回やってみた結果は、×、○、○、×、○、○、○、○、○、○。
これはできた(できるようになった)と言えるだろう。
この9回目の実験の時、落としたカップを検査者に手渡した
こんなことは初めてのこと。

手渡し.jpg (37080 バイト) カップを手渡す。その時のビデオbutton_video.gif (221 バイト)

手渡しができたのはこの時だけ。
しかし、渡そうという意図を感じさせる行動(相手の方向にポイと投げるなど)は頻繁に見られるようになったので、これからの訓練で、この手渡しという操作が定着する可能性はある。

B顔を近づけて(約60cm)見る
今度はカップと検査者の顔との距離を長くとって、カップを見た。

遠くから顔を向ける.jpg (43729 バイト) このように約60cmの距離からカップを見た。

結果は、○、○、○、○、○、×、○、×、○、○。
後半に2回失敗しているが、これはさつきの集中力の問題ではないかと考えられた。この実験は、次回に追試の予定。

C道具使用の実験
先日、京都大学文学部で開催された第37回京都国際心理学セミナーで講演された、ジョージア大学のドロシー・フラゲイズィ−先生の話に出てきたオマキザルの実験で使用されていた道具を自作して、試してみた。
この道具は、縦12mm×横12mm、厚さ4mmの正方形のベニア板の中央に、直径1cm、長さ50cmの丸棒を打ち付けたもの↓。

道具を使う.jpg (48673 バイト) フラットな板の上のバナナを道具を使用して取る。

このようにして、あらかじめセッティングされている道具の取っ手を引っ張って、バナナ片を引き寄せて取ることはできた(誰もやり方を教えたわけではない)。
しかし、うまく引き寄せられず、途中にバナナ片が残った時には、道具をバナナ片のところへもっていって、再度このように道具を使用することはできなかった。
また、バナナ片が横にずらして置いてある時にも、そこに道具を動かして引き寄せるということはできなかった。

道具を使う2.jpg (36382 バイト) バナナ片が横にずれて置いてある時、バナナ片のところに道具をもっていって引き寄せることはできない。

テナガザル・さつきの実験 NO3 2001.11.04(Sun) (2歳11ヶ月齢)

福知山動物園には8:50a.m.におじゃました。天気曇り、寒い。
検査時間は約1時間。
今回も、前回と同じく、視線理解の実験と、道具使用の実験を繰り返してみた。

@カップを指さしした場合
結果は、8回試みて、6回成功。順に、○、×、○、○、○、×、○、○。
2回の失敗は、さつきの側に検査の構えができていなかったことによる失敗と考えられた。
つまり、しっかりと指さしを見ていない時に失敗した。
全回も前々回もそうだったが、一つ目のカップを開けた後、必ずもう一つも取って開けてみる。また、片方を開けて、レーズンが入ってなかった場合には、もう一つのカップを開けて、レーズンを手に入れることができた。

onemore.jpg (25836 バイト) 正解してレーズンを取った後、もう一つもあけてみる

また、開けたカップを持ったまま、そのカップで、もう一つのカップを引っ張り落とすという場面も観察された。
これは、物と物とを関係づける行動と考えられる。

onemore2.jpg (26000 バイト) 初めに取ったカップを持ったまま、もう一つのカップにつけ、引っ張って落とした

今回、手渡しはできなかったが、取ったカップを検査者の方へ投げ返すシーンが何度も見られた。これは、レーズンをもっとほしいという動機による行動と考えられる。

throw.jpg (21963 バイト) 相手の方にポイと投げることはできる

Aカップに顔を近づけて(約50cm)見た場合
13回試みて、10回成功。順に、○、×、○、○、○、○、○、×、○、○、×、○、○。
これも、失敗したのは、さつきに構えがしっかりできておらず、検査者を見る間が持てなかった時である。

B顔を動かさずカップに視線を向けるだけの場合
検査者の目を見るように指さしをして引きつけてから実施したが、初めに視線を合わせてから検査者がカップに視線を落とす間に、追視が切れることがほとんどであった。しかし、何故か3回やって3回とも成功した。
ただ、試行回数が少ないので次回にもう一度試す予定。

sisen.jpg (30956 バイト) 目を見るように指さしで示しながら検査する

C道具使用の実験
前回と同じ道具を使った。
あらかじめセットしておいた道具を引き寄せてバナナを取るという課題は、3回やって3回ともできた。
それで、バナナを少し手前の横にずらして置いて試してみた(↓の写真)。これは16回試して、成功したのは3回だけ。
バナナの方向に道具を引き寄せた場合にうまくいったが、道具をバナナのそばに置き直して(定位して)引き寄せるということはできない。

tool.jpg (31484 バイト) バナナの方向に道具を引き寄せた場合にうまく取ることができた

次に、手前に丸い障害物を置いて3回試したが、それをよけて引くということは1回もできなかった。
それぞれの試行をした後、その場で道具をくわえて遊ぶことがあったが、「ちょうだい」と声をかけると、必ず検査者の方へ道具をポイと投げて返すことができた。返したらまたバナナがもらえることがわかっているから、そうしたのではないかと思われる。(眼鏡をとった時には高い木の上まで持っていってしまった。)

toolhuedle2.jpg (28233 バイト) toolhurdle.jpg (30297 バイト) バナナが取り残されて失敗

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