シロテテナガザルの発達検査   No4   00/02/27(Sun) 2歳

天気、曇り時々雪。こんな天気では、さくらは野外に出ていないだろうとは思ったが、来週から忙しくなり当分行けそうにないので、1カ月経ってないが動物園をのぞいてみた。
さくらは事務所の中にいた。ストーブの横に一人でつながれていた。ちょっと狭い。

私が入ると、待ってましたという顔をして、抱きついてきた。そしてしっかりくっついて離そうとしない。
朝から天気が悪く、客がいないので、よほど寂しかったのだろう。

さて、今日の検査は前回とほぼ同じ。

<検査とその結果>
@課題箱を横に置くと、中に手をつっこんで角板を取り出した。
A積み木を目の前に置くと、一個は持つが、すぐ落とす。
Bカップの中に入った一個の積み木を取り出す。
C大小二つのカップを重ねて置くと、小さい方を取り出す。
Dピンクのプラスチックボール2個を両手で持った状態で頭にタオルを掛けると足でタオルを取った。

さくら頭にタオル.JPG (16891 バイト) 足でタオルを取り去った

Eもう一回やると、右手のボールを落として右手でタオルを取った。
F鏡を見せると、後ろが気になる。じっくりは見るが、あまり興味を示さない。

さくらに鏡.JPG (23054 バイト) 鏡を見るさくら

G前回よく遊んだゴリラのぬいぐるみには興味を示さない。
Hバナナを半分に割って、目の前に左側と右側に離して置くと、迷わず、右側のバナナを右手で取った。その時左手に持っていたおもちゃを取り上げたら、左手でもう一つのバナナを取った。

さくら両手にバナナ.JPG (21326 バイト) 両手にバナナを持ってかじる

そして交互にかじっていたが、頭にタオルを掛けたら、バナナを持ったまま、頭を下げ左手を動かしてタオルをずりおとした。
Iテッシュを取り出すのにはあまり興味がない。2,3枚取り出してあきてしまった。
J3つの入れ子を重ねて渡すと、中の二つをひとつずつ取り出した。
しかし、取りだしたものを中に入れることはできない。
Kレーズンを目の前に置くと、親指と人差し指の途中ではさんでつまみ、食べる。
L帰ろうとすると、帰らないでとキューキューと鳴く。

さくら.JPG (25091 バイト) 額につけた赤いマークを、濡れタオルで拭こうとすると嫌がっておこった

<まとめ>
両手にものを持ったまま、足または頭と左手をうまく使って頭に掛けたタオルを取り去った。
重ねた入れ子から、中の小さい入れ子を上手に取り出せた。
鏡への反応は、少し慣れが見られたが自己認識はできず。
重ねた二つのカップから小さいカップを取り出すことが確認できた。
頭に掛けたタオルを、両手に持ったものを手放さずに取り去ることができるということが確認できた。
(外界との間に三つの結び目をつくることができている?)

シロテテナガザルの発達検査   No5  00/04/01(Sat) 16:00〜17:00 2歳1ヶ月齢

いい天気だった。この日に予定していた火山灰分析作業が延期になったので、さくらに会いに行くことにした。
動物園の観客動員はこのところ飛躍的に増えているらしい。15:30に着いたが、この日もすごい人だった。
さくらのまわりは人だかりで近づけない。
しばらく待って、16:00から検査を開始。

さくらのだっこ.jpg (22795 バイト) 検査後、疲れて甘えるさくら

前回、定位的操作について間違った結論をアップしていたので、ここで、訂正します。

<定位的操作とは何か?>
竹下秀子著「心とことばの初期発達:霊長類の比較行動発達学」 (東大出版会)によると、定位的操作とは対象操作の中で定位、すなわち、物の位置を定めること。「置く」「入れる」「渡す」「積む」などがこれにあたり、ヒトでは生後10カ月頃からみられる。
だから、前回確認した、大きいカップからより小さいカップを取り出すというのは、定位的操作とはいえない。逆に、小さいカップを大きいカップに入れることができる、あるいは人に渡すことができれば定位的操作といえるが、それはまだ確認できない。

さて、今回はできる限り多くの項目を試してみた。

<検査とその結果>
@鐘
鐘の部分をつかんで取り鐘舌をなめる。その後左手で鐘を持ち右手の人差し指で鐘舌をつつく。柄を持って振りならしてみせるが、持たせても興味を示さず下に落とす。

A物の出し入れ
二つのカップを重ねて手渡すと、右手で支持しながら左手で中のカップを取りだした。次にカップの中に積み木を入れるとそれもとりだしすぐにかじる。今度はカップの中に積み木を入れさせようと試みたがそれには興味を示さず、持っている積み木を下に落としてはカップを取ろうとした。

B対追視
正面に二つの積み木を提示し少しずつ離していくと初めは左側の積み木を追視してそれを取ろうとした。検査者が積み木を渡さなかったのであきらめたのか、今度は右の積み木を追視してそれを取ろうとした。右を見てから左を見、それからまた右の物を見るというような対追視は見られない。

Cタオルを取り除く
両手に積み木を持たせた状態で顔にタオルを掛けそれをどのようにして取り除くかということを見ようとしたが、右手に持った積み木を落としてタオルをつかんだ。(前回はピンクのボールやバナナを両手に持ったまま取り除くことができた。積み木に対する執着心がなかったのが原因かもしれない。またタオルを前から掛けたのでそれに気を取られたせいかもしれない。前回は後ろからタオルを掛けた。)

Dはめ板
円板をはめた状態で提示すると、それを外してかじったり捨てたりする。検査者がはめてみせてもはめることはできない。

はめ板.jpg (24583 バイト) 円板を取り出す

E課題箱
丸棒や角板をかじるだけで入れることはできない。

Fつまむ
レーズンを拾わせると親指の先と人差し指を曲げたところ(第二関節のあたり)で挟むようにしてつまむ。

G鏡
うつる自分の姿をなめたり頬をすり寄せたりする姿が見られた。また背後に写る人に驚いて振り返る場面もあった。頭にスプレーで赤いマークをつけたが反応はなし。

H木につるしたバナナ
手の届かないところにバナナをつるしておいて、道具を使用させて取らせようとしたが、お客さんに食べ物をたくさんもらっていてお腹がすいていなかったためかあまり興味を示さない。道具(孫の手)を持たせようとしてもすぐに落とす。

木のバナナ.jpg (30244 バイト) 木につるしたバナナを取ろうとする

Iティッシュ
右手で1枚、左手で5枚連続して取りだしたがそれで終り。

・・・さくらは少し疲れ気味・・・

Jひしゃくで水を飲む
バケツに水を入れてひしゃくで飲ませようとしたが、上から水面に口を近づけて飲もうとする。ひしゃくを持とうともしない。

<まとめ>
全体として、ヒトの発達でいうと、生後10カ月の節目を越えていないと考えられる。

<補足>
さくらは花粉症だった。テナガでの花粉症の報告はあるのかな?
土・日は昼頃から観客が増えるので、午後はさくらも疲れ気味で検査に集中できない。検査は午前中の静かな時間帯にやるべきだった。

シロテテナガザルの発達検査   No6  00/05/05(Fri) 9:20〜10:10 2歳2ヶ月齢

連休で天気がよい。人出が多そうなので早朝に動物園におじゃました。人が少なく落ち着いて観察できた。

これまでの検査で、さくらの発達上の課題が”定位的操作(「置く」「入れる」「渡す」「積む」などの操作)ができるかどうか?”にあるということが明らかになってきた(テナガで定位的操作が見られないということについては、今までに様々な報告がある)。それで、次の関心事は、その課題を乗りこえるためにはどのような教育的実践が必要なのかということになる。

養護学校や保育園などではいろいろ取り組まれているだろが、そのような実践例の報告が見あたらない。手探りでやるしかない。

今のところ、定位的操作の前段階である、物をつかむ、物を持ち替えるなどの操作をできる限りたくさんやらせることが大切かなと漠然と考えている。

道具使用や鏡による自己認識は、定位的操作のあとに出現するのだろう。

<検査とその結果>
@積み木
今日は赤い積み木に興味を示さない。取ってもすぐポイと捨てる。

A鐘
右手でもって左手で鐘舌をさわる。

Bおもちゃのマラカス
右手で持ったり左手で持ったり、口でくわえたり、足でつかんだり、持ちかえができる

さくらマラカス.jpg (18156 バイト) マラカスを持つ

Cティッシュ
右手、左手、口でティッシュを出す。次に、箱を持って鉄棒にぶら下がりながらティッシュを出す。更に、また座り込んでティッシュを出す。
結局、全部出した。あたりはティッシュだらけになった。

このあと、眼鏡をとったが、園長さんが返しなさいと言うと手渡した(?手を差し出すとそこに落としたのかも・・・)。

テッシュ-2.jpg (21717 バイト) ティッシュを出しまくり、結局全部を出しきった。

D入れ子による物の出し入れ
三つ重ねた入れ子の中の小さい入れ子を取り出すが、それだけ。左手で鉄棒にぶらさがり、右手で持ってかじる。

Eひしゃくでの水飲み
上から口をつけて飲む。

さくら水飲み.jpg (15115 バイト)  水飲み

Fタオルを取り除く
ピンクのボールを2個両手に持たせてタオルを頭に掛けるが、ジャンプした勢いでタオルを落とす。

Gバナナ
道具(木の棒)は使えない、というかそんなものはいらないという態度を示す。
また、手の届かないところにバナナがあると分れば取りにいかない。

H鏡
おでこに赤いシールを貼って鏡をのぞかせる。
貼った後、後ろにジャンプし少し離れたところから鏡を見、びっくりしたように頭に右手をやってシールを取ろうとする(これは自己認識できたと言えるのだろうか?ビデオに撮ってあるので何回も見直したが、やっぱり鏡を見ながらシールを取ろうとしている。シールの違和感から触ったのかもしれないので自分の頭に貼ってみたが違和感はない、それに貼った直後には反応しなかった。ただこの一回だけで再現性がないので何とも言えないが・・・)。しかし、シールは取れず。
その後、何回か長い間鏡を見るが、シールには一度も手をやらない。

鏡をじっと見つめる。鏡に頬を寄せる。なめる。後ろに手をやる、立ち上がって後ろをのぞくなどの行動が見られた。
今日はかなりじっくり鏡を見つめた。

その後、また私の眼鏡をとった。木の上までもって上がったがバナナを見せると眼鏡を落とす。

さくら鏡おでこ赤マーク-1.jpg (26218 バイト) おでこに赤いシールをつけて鏡を見る

I課題箱
丸棒を入れるのを見せるが、棒を探さない。興味を示さず。

Jはめ板
はめられた板を取り出して捨てるのみ。

Kアルミ容器の紅茶を飲む
初めは容器を持たずに口をつけてなめていたが、中身が少なくなると容器を右手で持って、紅茶をなめた。
(ボルネオ・セピロックのオランウータンの子どもは、ひしゃくでミルクを汲んで飲む。→ Borneo travel-Mar 2000 。)

さくら紅茶のみ.jpg (16507 バイト) この後、右手で容器を持ちあげて紅茶をなめた

<感想>
さくらの体がひとまわり大きくなっていた。
ティッシュ一箱を出し切るというように探索活動がずいぶん盛んになっている(集中力もついてきた)。そのおかげでお客さんの持っている食べ物や眼鏡などをとるというようないたずらも増えているようだ。

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