ダナンバレー2002/12〜2003/1 No1

日程表は以下のとおり。手配はジスコにお世話になった。
12/25 MH53   関空/クアラルンプール 11:30/17:35
12/25 MH2646 クアラルンプール/コタキナバル 19:45/22:20
12/26 MH2084 コタキナバル/ラハダト 06:55/07:50
12/26〜01/03  ダナンバレー、レインフォレストロッジ泊
01/03 MH2089 ラハダト/コタキナバル 13:35/14:30
01/03 MH7114 コタキナバル/クアラルンプール 19:35/22:20
01/03 MH52   クアラルンプール/関空 23:59/+07:05

1月3日のMH7114はキャンセルされて、違う便に変更された(出発が40分遅れた)が、他はほぼ予定通りだった。
ダナンバレーにはこれで6回目。もうセカンドハウスの感覚だ。
テレビもない、インターネットもない、新聞もない、ただ森があるだけ。でも、その森が素晴らしい。
森の匂い、音が体に染みこんできて、何ともいえないいい気持ちになってしまう。そして体の中からエネルギーが湧きだしてくる。
あるページ(KLUM PHOTOGRAPHY)に、以下の記述があった。
「Many scientists believe that the rainforest in Danum Valley is the oldest in the world.」
そう、古いものは価値があるものなんです。
これまで何度もテナガザル家族と一緒に歩き回ったので、ロッジ周辺の森の中のどこに何があるか、だいたい分っている。でも、この森は行くたびに毎回、新しい発見というか、違った風景を見せてくれる。だから、また行きたいという気持ちにさせられてしまうのだ。

今回は雨期の真っ最中(というか、始まり。ホントの雨期は2月らしい)のハズだった。まず、雨期と乾期がどう違うのか知りたかった。
12/26のラハダトからロッジへの道は、からからに乾いていた。河の水も少なく澄んでいる。ロッジの人に聞くと、ここ3日ほど全く雨が降ってないとのこと。なあんだ、やっぱりたいしたことないんだ。井上民二の”熱帯雨林の生態学”には、「ボルネオは、世界の熱帯雨林の中でも特異的に雨期と乾期の区別がハッキリつかない地域だ」と書いてあったからだ。
ところが、・・・。着いた日から、毎日雨が降った。だいたい午後か夕方、時に夜。一度だけ朝にも降った。これは本格的な雨期の始まりかもしれない。でも、乾期の夏にもこれくらいの雨は降ったぞ。
では、どこが違ったか?微妙な雰囲気が違った。曇りが多い。カラッと晴れない。何となくジメジメした感じ。そう、日本での梅雨の感覚だ。それに、森の活気が微妙に低下している感じを受けた。果物のなっている木も少ない。

第一に気のついたことは、ヘビが目についたこと。
例えば、こんなヘビだ。キャノピーへ行く道にいた。毒蛇らしい。体長20cm。

 Brown Snake?

こんなヘビが枯れ葉の中にいても保護色で見つからない。
第二に、サソリ。これも同じ道沿いにいた。体長14cm。サソリには黒とダークグリーンの2種類あって、このダークグリーンの方が毒が強いそうだ。

 Scorpion

第三に、トカゲ。

 Lizard

ヘビやトカゲなどのは虫類が目立つのは、雨期の特徴かもしれない。
動物写真を紹介したついでに、いくつか紹介しておこう。
ロッジの前にいた蝶。名前は知らない。この赤い花は、サンタンカ(Ixora chinensis)。

 Butterfly

ナイトウオークで見たカエル。

 Frog

Stick insect.

 Stick insect.

カワウソの集団。ビロードカワウソ(Smooth Otter)。Danum trail沿いにいた。これは珍しい!
8頭のこの集団は家族なのか、群れなのか。群れならどういう構成なのか?彼らはちょっとした物音で森の中へ逃げ込んだ。用心深い。

 Lutra perspicillata

菌類らしい。

 ?

夏にも見た昆虫(Lantern Fly)。前回とは色具合が違う。キャノピーにいた。体長5cm。

 Lantern Fly

蜘蛛。名前がわからん。

 ?

ダナンバレーNo2
テナガザル観察記
 2002年12月26日(水)〜2003年1月3日(日)早朝 ダナンバレーにて

今回は12/27〜1/2までの計7日間、観察するチャンスがあったが、そのうち1/1をのぞいて6日間も追いかけることができた。
これはラッキーとしかいいようがない。テナガザルを追跡するのは容易ではないから。
テナガは夫婦に子供2人の計4人家族。下の子は雄。上の子は雌。2002年8月には母親が幼児を抱いていたが、今回は子離れしていた。母親は、おなかが大きく乳が張っていたので、出産が近いと考えられる。
まず、その移動経路を下図に示す。なお、青色はplayback実験(A,C:モーニングコールの最中に、あらかじめ録音しておいた声を聞かせる。B:コールしてない時に、録音しておいた声を聞かせる実験。詳しくはNo3を参照されたい)をした地点を、黄色矢印はデュエットコールした地点を示す。


Fig. 1. Travel route on 27 December 2002.


Fig. 2. Travel route on 28 December 2002.

12月27日(木)Fig.1
05:47〜06:28 male solo song 雄がモーニングコールしている最中にplayback実験を実施(05:56〜06:30まで)、モーニングコールは最後にfemaleのgreatcallで終了
06:28〜07:00 移動
07:00〜07:24 採食(イチジク)
07:24〜07:30 移動
07:30〜07:49 採食(イチジクorAebony)
07:49〜07:52 移動(道路を横切る、木と木をジャンプで)
07:52〜08:30 採食(木の葉)
08:30      見失う
12:00〜12:30 発見。休憩しながら採食(イチジク)
12:30〜12:56 移動
12:56〜13:50 採食(イチジク、木の葉)しながら休憩していたが、見失った(ここで泊ったかもしれない)

12月28日(金)Fig.2
06:20      テナガザルを発見、昨日見失った木のすぐ側だった。
06:20〜06:59 採食(イチジクと木の葉)
06:59〜07:17 移動
07:17〜07:22 休憩
07:22〜07:26 移動
07:26〜07:52 採食(イチジク)
07:52〜08:04 移動
08:04〜08:22 遊び(8:04〜8:16まで2、3個体がオランウータンの巣の中に入って遊ぶ。中の様子は見えなかったが、じゃれあっているように感じられた。)
08:22〜08:56 移動(8:27何か木の実を食べる。つまり、どの木の実が熟しているか偵察しながら移動しているようだ。)
08:56〜09:25 採食(Giewei)
09:25〜09:40 移動
09:40〜10:07 休憩、9:57に1個体がうんち
10:07〜10:28 採食(イチジク)、10:30に1個体がうんち
11:05〜12:00 休憩(それぞれ別の木に分かれて、木の葉を食べながら休む)
12:00〜12:18 休憩(木の葉を食べながら)
12:18〜13:53 移動(時々、休憩し木の葉を食べるながらゆっくり移動。12:50高い木に登り、隣の木に飛び移る。)
13:53      動かないので、観察終了


Fig. 3. Travel route on 29 December 2002.


Fig. 4. Travel route on 30 December 2002.

12月29日(土)Fig.3
06:00〜     昨日観察を終了した地点が暗くてよく分からない。付近を歩き回って探す。
07:13〜07:23 バサッという音で発見。移動中だった。
07:23〜08:07 採食(イチジク)
08:07〜08:15 移動
08:15〜08:23 採食
08:23〜08:50 移動
08:50〜09:05 休憩
09:05〜09:26 移動
09:26〜09:33 休憩(観察している人間たちをテナガが観察していた。)
09:33〜09:50 移動
09:50〜10:15 休憩(木の葉を食べながら)
10:15〜10:51 移動(10:22〜10:23木の実を食べる、10:29木の葉を食べる)
10:51〜11:11 採食(Aebony)
11:11〜11:46 移動
11:46〜12:10 採食(木の葉)
12:10〜12:13 移動、ロッジ前のフタバガキの大木
12:13〜13:30 採食(木の新芽)、その同じ木で休憩しているのを14:10まで確認したが、その後動かなくなったので観察終了。

12月30日(日)Fig. 4
06:11       ロッジ前のフタバガキの大木にはいなくて、すぐ近くで発見。
06:11〜06:15 移動
06:15〜06:35 採食(木の葉)
06:35〜06:58 移動(時々木の葉を食べながら)
06:58〜07:58 採食(イチジク)、07:46うんち
07:58〜08:20 休憩しながら採食(Barringtonia、しかしこれは少し囓っただけ→Fig.13)
08:20〜08:40 休憩、この時08:27〜playback実験Bを実施。聞かせている最中はじっとしていて、終わるとすぐ東に移動した。
08:40〜08:47 移動
08:47〜09:08 採食(Aebony)
09:08〜09:37 移動、道路を飛び越える、途中採食も。09:36おしっこ
09:37〜10:15 採食(木の葉)と休憩、09:50〜09:57赤い葉とその葉がついていた小枝を食べる
10:15〜10:30 隣の木に移って、採食(木の葉)と休憩
10:30〜10:44 移動
10:44〜11:05 休憩(従業員宿舎裏の木の上から、人の生活の様子、子供の声や若者たちが演奏するエレキバンドの音などを見学する。ここでは、人間がサルに観察されている!)、11:05うんちとおしっこ
11:05〜11:33 移動(さきほどのplayback実験B地点に全速力で戻る!)、11:20うんち、11:24木のうろから水飲み
11:33〜12:30 採食(イチジク)と休憩、B地点に約1時間滞在した。
12:30〜13:10 ゆっくりと移動
13:10〜13:20 採食(木の葉)
13:20〜13:25 移動
13:25〜14:30 採食(木の新芽)、その後動きがなくなったので、観察終了。この木(ロッジ前のフタバガキの大木)で泊る。


Fig. 5. Travel route on 31 December 2002.


Fig. 6. Travel route on 2 December 2002.

12月31日(月)Fig.5
05:50〜06:58 male solo song 雄がモーニングコールしている最中にplayback実験を実施(06:02〜06:15までplayback実験)、モーニングコールは最後にfemaleのgreatcallで終了
06:58〜07:36 木の葉(芽)を食べながら移動
07:36〜07:52 採食(Obah Nasi)
07:52〜09:21 移動しながら、木の葉を食べる(08:18、09:03にうんち)
09:21〜09:35 デュエットコール、この最後のgreatcallの時、母は木の枝の上を走りながら下の息子を抱き取りお腹に抱えて、コールしながら走っていった。なおこのデュエットコールの始まる前にLong tail macaqueが付近でキーキー声をあげていた。
09:35〜09:42 移動
09:42〜10:15 採食(イチジク)
10:15〜10:40 移動、10:31木のうろから水を飲む
10:40〜11:34 採食(イチジクと木の葉)、11:34にうんち
11:34〜11:45 移動、11:45に3個体でグルーミング
11:45〜12:05 移動
12:05〜13:00 休憩、13:00以後動かない。見失った可能性が高い。翌朝もこの地点で発見できず。

1月1日(火)
06:00に昨日見失った地点に行ったが発見できず。しょうがないので、ガイドと一緒にTekaraトレイルへ。

1月2日(月)Fig.6
05:35〜06:10 male solo song 雄がモーニングコールを開始、06:10雨が降ってきたためコールが中断した。
05:35〜07:08 雄がコールしている間、他のメンバーは木の芽を食べる。6:10からは雄も食べる
07:08〜07:32 移動
07:32〜07:49 採食(木の葉)
07:49〜08:02 移動
08:02〜08:57 休憩。08:18〜08:56まで対岸で長いfemaleとmaleのかけあいコール(duet call)とそれに続くgreat callが聞こえてきた。この時は、動かずにじっと聞いていた。この対岸のコールでは、08:43〜08:53の10分間に12回ものgreat callがあった。
08:57〜09:08 移動
09:08〜10:06 採食(イチジク)
10:06〜10:40 同じ木で休憩しながら木の葉を食べる(この時レッドリーフモンキーの家族が近づいてきたが、お互いに接触しないように行動して何事も起こらなかった)
10:40〜11:20 移動(途中、11:10前後に雨が降った)
11:20〜11:30 Aebonyの木をめざしたところ、若いオランウータンがすでに食べていたのでその木を避けて、近くの別のAebonyの木に移動し採食
11:30〜11:45 移動、道を飛び越える。
11:45〜11:50 移動
11:50〜12:40 休憩(従業員宿舎裏の木の上から、人の生活の様子を見学する)
12:40〜13:05 移動
13:05〜13:25 休憩
13:25〜13:30 移動
13:30〜13:40 休憩、13:40以後動かない。見失った可能性が高い。

6日間の移動経路をまとめると、以下のようになる。縄張り範囲は変わらないが、移動経路は明らかに昨年夏とは違っている.。
これは、イチジクなどの果物のなっている木の分布が異なっていること(今回目撃した「実のなっている木」をFig. 8に示した)の他に、Playback実験をした地点(A、B、C)が気になって、そこを頻繁に訪れた(A,C地点には果実が実っていないのに!)ためではないかと考えられる。


Fig. 7. Travel routes (in red) and home range (light green polygon) used by the study group during 6 days.


Fig. 8. Fruits map
(Red : Fig, Blue : Aebony, Purple : Obah Nasi, Green : Giewei, Black : Barringtonia)

テナガザル家族が食べた果物とうんちの写真を示しておく。


Fig. 9.Fig(イチジク)


Fig. 10. Aebony


Fig. 11.Obah Nasi (Glochidion rubrum)


Fig. 12.
Giewei (Ryparosa acuminata)


Fig. 13.Barringtonia


Fig. 14.
Faeces

森の中に木の実は少なかった。そのかわり木の葉をよく食べていた。

 木の新芽を食べる

また、一日の行動終了時間が夏より約1時間早くなっていた。13:30〜14:00頃には、ねぐらのとまり木に着いていた(2001年夏では、15:00頃)。
たまたま果実が少ないので活動時間を短縮してエネルギーを温存する、つまり省エネ活動をしていたのか、それとも雨期の特徴なのかは分らない。

<一日の行動まとめ>
フタバガキの大木のてっぺん付近で就寝。
05:30前後に起床。06:00頃に明るくなってくるので、食事開始。イチジクなどの果実があればそれを食べ、なければ木の葉や新芽を食べる。ある種の赤い葉は必ず食べる。
午前中は、移動、食事or休憩のくり返し。木のうろに溜まった水を飲むことがある。うんち、おしっこもする。
昼過ぎ01:30〜02:00頃には、ねぐらのフタバガキの木に到着。そこで夕方まで過ごして(あまり動かず)、そのまま就寝する。
グルーミングは非常に少ない。午前中の休憩時にじゃれあったり、追いかけっこをして遊ぶことがある。
今回はモーニングコールを頻発したが、これはplayback実験の影響が考えられる。普段はもっと頻度は少ないだろう。

<データ>
縄張り面積:約16ha
一日の移動距離:770〜1180m

<6日間追跡した中で観察した行動の分類図(平均値)>
ただし、「朝起きてから、午後2時前後にねぐらに着くまでの行動」についての平均値を示す。さらに、ソングは毎日はしないので、小さい値になっていることに注意。モーニングソングは、3/6日、デュエットソングは1/6日のみコールした。また、グルーミングが記録されていないが、これは単に目撃できなかっただけかもしれない(高い木の上での触れ合いは、葉っぱに隠されて見えないことが多い)。
採食に半分近い時間が費やされていることが分る。


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